「インフルエンザを移したかも知れませんので、申し訳ありません」って言う事前謝罪は必要?姫路市役所の対応から、療育サービスの本質を考える


(提供:姫路市)

先日、市外(姫路市)からお越しになったご利用者様がありました。

ご相談内容は、療育についてのお話で、「今受けている療育の方向性で間違っていないか、相談したい」ということでした。

お子様とご両親がお見えになりました。

子育てにとても熱心なご両親で、療育先だけでなく、ご自宅でも色々と取り組みを実践されているとのことでした。ご相談といっても、私からのアドバイスはほとんど必要ないくらいで、「ご両親の今のお考え(方向性)で療育を継続すれば、心配はないと思います」とご回答しました。加えて、進路先の不安もお持ちだったので、進路を選ぶコツについても合わせてご紹介しました。

で、ご相談自体は、スムーズに行われたのですが、今回ちょっと「え?それってどうなの?」というお話を伺ったので、一つの話題としてご紹介します。

お断り
以下のお話については、保護者様から「お名前を記載しないこと」を条件にブログなどへの掲載の許可をいただいています。

お子様は、市内の公立の療育施設に通っているそうですが、インフルエンザの時期になるとその施設にスタッフから電話がかかってくることがあるそうです。

その電話の内容は、「昨日お越しいただいた際、職員からインフルエンザを移しているかも知れません。もし、お子様がインフルエンザに今後罹患された場合は、スタッフから移ったことが考えられますので、お詫びします」ということだそうです。

つまり、「スタッフが今日、インフルエンザに罹患して休んでいる→昨日の時点でインフルエンザに罹患していたと思われる→昨日こられたお子様に移っていることが考えられる→もしお子様が発症したら、スタッフが移しているかもしれません→予めお詫び申し上げます」。

という流れのようです。

このお話を伺って、ちょっと驚愕しました。

 

インフルエンザなんて、どこでどう、移るか分からないですよね。

それが、「もしインフルエンザになったら、うちのせいです」と断言しちゃっているわけですね。

 

これって、反対に移ったという根拠がなくても「おたくのスタッフのせいで、うちの子どもがインフルエンザになった。責任とってください」と言われたら、どうするつもりなんでしょう(笑)

補償するのかなあ。

市をあげての方針なのか、この施設独自の方針なのか、良く分からないのですが。

もしこの施設にかかっている方で、お子さんがインフルエンザに罹患した場合は「スタッフの方から移されたかもしれません」と申し出てみるといいかもしれません。

補償してくれるはずです(爆)

 

ある意味ひどい話ではないでしょうか?

ぼくも公務員をやめた口ですが、ぼくのいた自治体はここまで酷くはなかったなあ。

 

そんな根拠のない謝罪は、いらないと思いますよ。

それって、本当に子どものことを考えていることにはならないと思うんですよね。ただクレームを恐れているだけというか。

いや、余計にクレームにつながると思うのですが。。。(笑)

 

でも、実はこの問題は、単に面白がる話ではなく、療育の本質にもつながる問題でもあると思っています。

どういう問題につながるのか、というと、「良かれと思って言っていることが、実は問題を生じる原因になっていることもある」ということです。

例えば療育先で、「この子はじっとしていられない子なので、じっとできるように教えて行く必要がある」と言われて、無理やり椅子に座らせようとすることがあったとします。

「じっとしていられない=我慢ができない」とレッテルを貼ってしまうと「なぜじっとできないのか」「どうすれば落ち着いて課題に向かえるのか」ということを考えなくなってしまいます。

つまり、それは思考停止につながる、ということです。

思考停止している療育なんて、受けるだけ時間の無駄です。

このように、言っている方は全然悪気はないけれど(それどころから「子どものためを思って言っている」と思って言っていることが多い)、結果子どもの可能性を潰しているっていうことが、療育では結構あるんですよね。

 

今回の、「スタッフがインフルエンザを移したかもしれないので、事前に謝ります」という対応で考えると、「どうインフルエンザが広がらないように職場としてどう環境設定を考えていくか」ということや「多くの来所者にインフルエンザ対策に大切な手洗いの重要性を周知していく」ことこそ、取り組むべきことです。

事前に謝っておくという対応は、市役所の単なることなかれ主義を、市民に押し付けているだけです。

公的療育機関は、民間事業所のお手本としての役割も求められています。

こういった「自己満足」的な発想でいること自体、問題であるということに気付くべきではないでしょうか。

 

この問題については、今後も取材を続けていきたいと思います。

みなさんもぜひご意見を教えてください。