「理学療法士の開業=整体院」は王道のようです
臨床現場でそれなりの経験を積んで、「さあ、これから自分の力で食べていくぞ!」と独立を考える人も多いと思います。
理学療法士が起業するのは、ぼくとしては大いに賛成。
なぜなら、今の時代は、病院だってバタバタ潰れる時代。
一生安泰な職場なんてないですからね。
だから、自分の力で生きていく、というのは、基本的にはいいこと。
ぼくも社長になって、世の中の見え方がガラッと変わりましたしね。
理学療法士も、どんどん起業するべし、と思います。
で、例えば臨床経験5年くらいの理学療法士が、「起業するぞ!」となった時、多く人が「自分のこれまでのスキルを活かした仕事」を考えます。
で、導き出される答えが、「整体院」。
整体師という名称は、自称なので、理学療法士が名乗っても全く問題はありません。
加えて日本において理学療法士(や作業療法士)には、開業権が与えられていないため、理学療法士の名称では開業できないので、整体師として開業するのが良さげです。
だから開業を考える理学療法士の多くは、整体師(あるいはそれに近い適当な名称を付けて)として活動します。
しかし、ぼくは、理学療法士が整体師として治療院を開業することは失敗のリスクが多いので、止めておいた方がいいと思っています。
その理由は、ビジネスとして上手く行かない確率が高いからです。
整体師として働くのは止めておいたほうがいい理由
整体師として起業するにはお勧めできない理由について、箇条書きで紹介します。
1.現在グレーな領域と言われているから。
2.ライバルが多すぎて、生き残れないリスクが高いから。
3.自分の労働時間を切り売りしているようでは、収益に限界があるから。
1.グレーな領域と言われているから
理学療法士が整体師として活動することに対して、日本理学療法士協会は警鐘を鳴らしています。
ただし、身体に障害のない方々への、予防目的の運動指導は医師法、理学療法士及び作業療法士法等に抵触しませんが、事故あるときには、他の法的責任が免除されることはありません。医師とのしっかりとした連携の上で、より安全で効果的な運動指導を行うことが求められます。
平成27年1月30日
公益社団法人日本理学療法士協会 会長 半田 一登
まあ、そうは言っても、理学療法士の名称を使わずに、個人事業主として開業すれば、グレーとはいえないですよね。
なので、現時点では、理学療法士という名称を使わない限り、特に問題ないかも知れないです。
2.ライバルが多すぎて、生き残れないリスクが高いから
整骨院・整体院などはいわゆる激戦領域です。
上の地図は、ぼくの会社がある神戸市東灘区の整体院を検索した結果です。
数キロ四方のエリア内に、これだけの整体院があります。
さらにグーグルに登録していない店もあるとして、25~30店舗くらいになるかと。
この中には、地域密着で長年地元で愛されている整体院も多くあるはず。
そんな中、あなたが店を構えたとして、集客できると思いますか?
え?「他に負けないような技術があるから大丈夫?」
甘い。
そういう人って、商売が分かっていないんですよ。
お客さんは、手技(テクニック)だけで決めているのでないんですよ。
たしかに、「あー、楽になった」とか「あそこの整体院はあまり効果を感じないな」という感想はあるでしょう。
だからといって、それだけで通う整体院を選んでいるのではないということ。
すでに、成功している理学療法士がいるなら、彼らは技術力だけで集客しているわけではない、ということです。
例えば、コミュニケーション力だったり、説明力だったり、人間性だったり、あるいは戦略家であったりするのです。
その才能がないなら、まず負けます。
3.自分の労働時間を切り売りしている働き方では、収益に限界があるから
特に大事なポイント。
起業する時に、どんな仕組みで起業するかがポイントになります。
してはいけないことは、自分の労働時間を切り売りして稼ごうとすること。
例えば、理学療法士が副収入を得たい場合、多くの人がアルバイトを掛け持ちする、という方法を考えると思います。
病院勤務が終わってから、アルバイトで別の診療所に働きに行くことなどですね。
でも、このやり方は、相当非効率なのです。
ぼくが理学療法士になった27年前なら、理学療法士のアルバイト時給は、5,000円~1万円ほどあったと思います。
このくらいの時給なら、時間効率が良いので掛け持ちも有りかもしれませんが、さすがに今の時代に時給1万円はありえないですよね。
あったとしても、何かウラがありそうです(笑)。
だから、副収入を得たいなら、自分が働かなくても、自分に収入が入る「仕組みを考える」ことが大切です。
起業を考えるときも同じ。
整体院を自ら院長となって切り盛りする場合、自分が働き続けない限り収入を得ることができない、ということになります。
また、時間は有限なので、いくら効率化を図っても、1日に30人も見ることはできませんよね。
逆に、一人でも多くのお客さんに対応しようとすると、「長時間営業」。
できるだけ顧客数を増やしたいと思うなら「値下げ作戦」。
ところが、それらの戦略は投下時間に比べ売上増にはつながりにくいばかりか、「自分の価値を自ら下げている」ことになってしまいます。
自分が働かなくても、収益化できる仕組みを作れ!
そうならないためには、「自分が頑張らなくても、あるいは、ほどほど頑張るだけで、収入を得られる仕組みを作る」ということが最も重要ということになります。
ここを間違えると、ずっと忙しいばかりの仕事人生になってしまいます。
では、どんな仕組みが最も効率的なのか?ということですが、それにはいくつかの方法があります。
自分の価値を売れ!
一つは、「自分にしかできないものを作り、それを高価値で売る」ということです。
これは、セルフブランディングにもつながります。
例えばぼくの例で言うと、「子どもの姿勢と体作りの専門家」としての顔があります。
「日本一、保育士さんを応援する理学療法士」として、全国の保育園での講演活動や保育園コンサルタントをお受けしています。
その道での認知度が高まるまで、3年はかかりましたが、最近はメディアからの取材も多くなり、合わせて保育園での研修会講師として招いていただけることが加速度的に増加しています。
具体的な数字は書けませんが、2時間程度の講義を行い、数万円の講師料をいただくことができれば、副収入としては十分ですし、もっと本格的に講義やコンサルタント活動に力を入れれば、収益化をさらに加速させることもできます。
自分の得意な分野を見つけ、それにもう一つの「何か」を掛け合わせると、「あなたらしさ」が生まれます。
なお、掛け合わせる「何か」は理学療法以外のもの(領域)が良いです。
そうでないと、あなたらしさは、いつまで経っても広がりません。
人に稼いでもらうための仕組みを作れ!
もう一つの仕組み化は、「会社経営者になり、自分ではなくスタッフに稼いでもらう」という方法です。
これは、通常の会社の仕組みに他なりません。
整体院で言うと、自分はオーナーとしてスタッフ教育や運営に専念し、実際のお客さん担当はスタッフに任せる、ということですね。
もしかしたら「スタッフには自分のような技術がないから、やっぱり自分が動かないと」と思う方もいるかも知れませんが、その場合はあなたの持っているスキルをスタッフに教える(育てる)ことで、事業がまわるようにしていくのが得策です。
ぼくの例で言うと、会社の代表として、いくつかの事業を並行して走らせているうちの一つ、「発達障害児のための個別学習塾」を例に考えてみましょう。
この事業所は、発達障害児に特化した学習塾です。
学習塾と言っても、一般の学習塾のように、計算ドリルや漢字の書き取りなどをさせることはなく、制作活動などを通して、学習の基礎を学ぶ教室です。
講師はもちろんぼくではなく、元小学校教師の心理士が担当しています。
ぼくは、サイトの構築やお知らせ記事の作成、広報やセミナーの企画といった内容で参画しますが、普段の授業を行うわけではありませんし、そもそも教室にもほとんど顔を出しません。
要は、スタッフに一任している状態です。
なにか問題があれば、スタッフと連絡を取れる仕組みを構築しているので、会議の必要もありません。
事業がまわる仕組みを作っているので、塾の開講日にぼくがそこにいなくても全く問題がありません。
極端な話、ぼくが海外にいても事業は滞りません。
このように、会社の代表として、組織が上手くまわる仕組みを考え、実践する方法ならあなたは時間から開放されます。
そして、起業する際に何よりも大事になるのが、「人と同じことをしない」ということです。
つまり、「あなたオリジナル」のもの(商品やコンテンツ)を売っていかなければならない、ということ。
そのためには、成功者のマネではなく、自分の強みを見つけ、自分で試行錯誤していくことが大切です。
ちなみに、ぼくがオススメする戦略は、「ランチェスターの弱者の戦略」です。
ぼくは、独立起業するまでの1年間を掛けて、ランチェスターの戦略を勉強しました。
詳細は他所に譲りますが、ソフトバンク、セブンイレブン、HISなどが採用した営業戦略です。
- すでにある大手・競合とは戦わない。
- 専門領域を特化する。
- エリアを絞る。
など弱者が勝ち残るための、戦略を学ぶことで、あなたの強みはより磨かれると思います。
整体院を開く前に、以下の書籍を読んでみてください。整体院の開院はリスクが高いことが自ずと理解できると思います。
ビジネス実戦マンガ ランチェスター戦略 弱者が勝つ最後の方法
独立起業するなら、セルフブランディングと会社経営が1番!
ということで、まとめです。
・理学療法士が独立起業する場合、整体院の開業を考えがちですが、以下のような失敗リスクがあります。
- そもそもグレーゾーンで、今後どう転ぶか予測不能。
- 勝ち易きに勝つ、という領域ではない。
- 自分の労働時間を切り売りする働き方だから。
・自分が働かなくても、収益化できる方法はあります。
- セルフブランディングで自分の市場価値を上げる。
- 会社の経営者になり、人に稼いで貰う仕組みを作る。
セラピスとの新しい働き方を、構築していきましょう。