言語聴覚士はこの先何処へ行くのか?理学療法士の失敗から学べ!


※この記事は、以前noteで書いていた記事を加筆修正したものです。

それは一本の留守電からはじまった

先日、ぼくの会社で求人を行いました。

子どもの発達に携わる専門職を募集したのです。

募集職種は言語聴覚士です。

 

言語聴覚士とは、言葉や聞こえ、飲み込みなどに関する医療的知識を持ったリハビリの専門家です。いわゆる国家資格というやつです。

ぼくは、言葉が遅れている子どもや、コミュニケーションがうまく取れない子どもに対して、言語聴覚士がレッスンを行う教室を経営しているのですが、そこで働いてもらえる言語聴覚士さんを募集したのです。

 

で、先日、職場に出たら、スタッフから「言語聴覚士の募集の件で、留守電が入っています。ご確認をお願いします」と報告がありました。

早速留守電を聞いたところ、「求人の件で、一度見学をしたい。ついては、○○○(電話番号)に電話をしてください」というメッセージでした。

「へ!?留守電に『見学したいから、電話してきて!』って入れるか?普通。…」と思いつつ、指定された番号に電話をかけたところ、ご実家の様子。

コレコレと事情を説明すると、ほどなくして御本人が登場しました。

簡単にどんな仕事内容か話して、「では、ご検討ください。応募しようと思われたら改めてご連絡をください」と電話を切ろうとすると、「ぜひ見学に伺いたい」とのこと。

それならば、と日程を調整し、「万が一急な事情でご連絡を差し上げることがあるかもしれないので、携帯番号をお知らせ願えますか?」と言ったところ、「それでは携帯番号をこの後すぐにメールでご連絡します」と。

じゃあよろしくお願いします、ということで電話を切りました。

メールが届かない…だけじゃなかった!

その後待てど暮せど、電話番号を書いたメールが届きません。

「もしかしたら、緊張していて、電話番号を送ることをすっかり忘れているのかも」と思い、当日まで待つことにしました

さて、当日待ち合わせの15時が近づいてきました。

結局メールはないままでしたが、それは良しとしましょう。

 

と、待ち合わせの時間の3分前に、電話が鳴りました。

「ああ、道に迷ったかな?」と思い、電話に出ると、思いもかけない一言が電話口から聞こえてきました。

「ちょっと、私ではそちらにご迷惑をかけるので、止めておきます」

えーっと。今日は来ないってこと?

 

「はい」

はいじゃねーよ。

 

「そちらにご迷惑をかける」っていうことをたった今思いついたのかよ!

 

そう言おうとかと思ったものの、応募する気がない人に、アレコレいっても時間の無駄なので、「そうですか。分かりました。応募はキャンセルですね。ご連絡ありがとうございました」と言って受話器を置きました。

それなら、一週間前にでも、いや、何なら前日でもいいので、キャンセルの連絡できたはずです。

当日の3分前ですよ。

 

きっと言語聴覚士という仕事は、社会ニーズも高く、就職も売り手市場なのです。

だから、こんな強気なことができるのです。

 

うちのような弱小会社なんて、「勤めてやる」というタカビーな感じなんでしょうが、ちょっとひどすぎます。

いくら売り手市場だからといって、これは無いよなあ。。。

でも、これって「個人の問題」で済まされることではないよね。

今回、このことを書いたのは、単に腹が立つ、とかいうことではないからです。

この人だって、やがてどこかの病院だったり、施設だったりに勤めるわけですよね。

そのときに、相手の都合を考えない、身勝手な対応をされたら、患者さんや家族はどう思いますか?

「大丈夫か?言語聴覚士」と思いますよね。

 

つまり、一人の言語聴覚士が原因で、言語聴覚士全体の印象が悪くなるんですよ。

だから個人の問題って片付けられることではないんですよね。

専門バカを育ててどうするの?

そう。
ぼくもこの人に対してというより、「大丈夫か?言語聴覚士」と思ったんです。

売り手市場だからといって、こんなのでいいのか?と。

例えば、理学療法士という職業がいい例です。

 

ぼくが理学療法士になった26年前は、理学療法士という言葉自体も認知されておらず、病院の就職は、引く手あまた。
給料は、こちらの言い値(実際初任給が手取りで36万くらいありましたからね)。

その時代、理学療法士は「やれ○○テクニックだ」「△△法という手技が凄い」とか、専門技術の話ばかり。
世間に対して、理学療法というものをどう理解してもらうか、リハビリというものをどう認知してもらうか、といったことには真剣に取り組んできませんでした。

その結果、今多くの人が、リハビリとは、辛く痛く、苦しいもの、と理解し、介護保険の場では、理学療法士は高齢者の足や腰のマッサージばかり。もしくは、散歩の付き添い。

マッサージなら、マッサージ師の方のほうが上手いに決まってます。
散歩の付き添いなら、話題豊富な話好きのおばちゃんの方が上手いに決まってます。

 

そうです。
理学療法士は道を間違えて、取り返しのつかないところまで、来てしまったのです。

取り返しのつかないところまで来た、と感じている人は、会社を起こしたり、新しいコトを始めたり、新しい世界へ羽ばたいているのです。

えーっと、その中にぼくもいる、ということが言いたいのです(爆)。

理学療法士の過ちから学べるはず

理学療法士に比べると、まだ歴史が浅い言語聴覚士は、ここから学ぶべきことが多くあります。

でも、同じ道を歩もうとしているんですよね。

 

だから、言語聴覚士でもないぼくから、言語聴覚士協会に一言。

国家試験に通る人を育てるのではなく、「人を支える言語聴覚士」を育てないとダメですよ。

ちゃんと学生指導、できていますか?

専門家としてのスキルを上げることばっかりを重要視していませんか?

その前に社会人としてのスキルアップをカリキュラムに組み込んでいますか?

 

え?

個々の問題だから、言語聴覚士協会としては、関係ない?

ダメだよー。それは無責任。専門バカばっかり育ててどうするんですか。

ともすれば、専門家というものは、専門バカになっていくんですから。

 

専門バカというのは、世間からズレた感覚を持っていても、それに気づかないんです。だから専門バカなんですけどね。

まあ、最近は養成校側が、少ないパイを取り合う(学生を集めることに必死)状況なので、そんな悠長なことを言っている場合じゃないことは分かるんですけどね。

本当に素敵な方もいっぱいなのに、もったいない。。。

あ、本当に優しくて、親切で、相手の立場を尊重できて、っていう人ももちろんたくさんいるんですけど、そういう人たちって、基本穏やかな性格だから、あまり声を大にして、「それじゃ専門バカばっかりになっちゃうぜ!」と叫んだりしないんですよね。

あと、言語聴覚士さんは、女性が多いので、内輪で話が完結しやすい傾向があります。

これって、ほんとにもったいないです。

 

若い理学療法士には、職場から「高齢者の腰や足をマッサージしておけばいい」と言われて、不満を持ちながら仕事をしている人が多いと聞きます。

本当は、リハビリを通して、人を元気にしたい、心の支えになりたい、学んだ技術を提供したい、と思っているのに、やりがいを持って働けない現実。

それと同じ轍を踏まないようにしてほしいと思います。

 

まだ間に合います。

澱んでいると、あっという間に、二の舞ですよ。

だから、あえてぼくが問題提起しておきました。

 

頑張れ!真面目で優しい言語聴覚士さん!

頑張れ!言語聴覚士協会!

 

ま、大きなお世話なんですけどね(爆)