発達障害のあるお子さんの体の課題は誰にも気付かれない
ぼくは理学療法士を27年やっています。これまでの臨床経験で感じてきた、「大人の思い込みが子どもの可能性を潰している」というお話発を、達障害のあるお子さんの体の課題を例にお話します。
まず、結論から書くと、「発達障害のあるお子さんの体の問題って、ほとんど気付かれていない」。
つまり、将来的に体の不調を来すような身体的な課題が出ていても、気付く人はほとんどいない、ということ。
将来的に起こる体の不調とは、膝の痛みとか、足首の変形とか、姿勢の悪さからくる所々の問題なんかですね。
例えば、発達障害のあるお子さんの場合、足首周りの筋肉の活動が弱い(あるいは各筋肉の活動のバランスが悪い)ため、足がねじれた状態で床に付く、「外反扁平足(外反偏平足)」という状態が良く見られます。
小学校くらいまでのうちは、体重も軽いので、さほど問題にはならないのですが、成人してから問題となることが多くあります。
それは、足首の痛みはもちろんのこと、膝の痛み、腰痛など、色々な場所へ波及してきます。
そして、成人になってからの痛みは、消し去ることができず、要は「痛みと付き合っていく」しか方法はありません。
これは、ぼくが多くの成人施設(作業所など)の方を見てきた経験から、言えることです。
彼らの多くが、膝、股関節、腰のどこかに痛みを抱えています。
おそらく幼少時代から、気づかれないまま過ごしてきたのでしょう。
以前書いた以下の記事もご参考にどうぞ。
そこから学べること
早いうちに将来起こりうる問題について気づき、手立てを講じることで、将来の不安や二次障害(何かが原因で別の問題が起こること)は、減らすことができます。
要は、気付くか、気付かないかにかかっています。
上の例でいうと、外反偏平があったとして、「それは将来問題につながりそうなのか」「いつまでなら様子を見ればいいのか」「今できる手立てはなんなのか」などを知っておくことが大切です。
「どんな靴を履かせるといいか」、といった日常の具体的な対処方法を知れば、なおよいです。
で、そのためには、キチンと現状について評価を受ける、ということが大切になります。
外反偏平足であれば、小児整形外科医や理学療法士が得意としている分野です。
そういった専門の人にかかることで、将来を見据えて対処していくことができれば最強です。
もちろん外反偏平足は、一例であって、その他の困りごとがあれば、その専門の人に聞く、確認する、教えてもらうことが大切です。
「授業中、立ち歩くのは我慢ができていないから」とは限らない!
「発達障害=言葉やコミュニケーションの課題であって、体の問題は特にない」と「思い込んで」いませんか?
「偏平足は、運動すれば自然に改善する」と「思い込んで」いませんか?
どんなことであっても、思い込みほど怖いものはありません。
言葉だってそうですね。
「言葉が出ない子は、絵カードを見せて言葉を繰り返し言わせたら、やがて言葉がでるようになる」
あり得ません。
学校でもそうです。
「この子は授業中、ずっと立ち歩く。我慢が出来ない子だ」
良く聞かれるセリフです。
そうとは限りません。
椅子に座っているのがしんどい子どもは、仕方なく立ち歩く(ことで体をリセットする)こともあるのです。
他に興味が向く子は、そのことを追求しようとして動いているだけなのです。
もし、立ち歩く理由がそれなら、それで良いですよね?
そんな子に、我慢をさせることを強要すればどうなると思いますか?
自分に自信がなくなって、学校も自分も嫌になって、自分の世界に入って行きます。
これも二次障害です。
結局、将来困るのは、その子と保護者です。
だから、声を大にして言っておきます。
ブログなので、声を大にして言っても聞こえないので、文字を大にして書いておきます。
「大人の勝手な思い込みで、子どもの未来を潰すな!」
そういうと、絶対に「子どもに社会性を付けさせてやりたいという思いで言っているのだ」とお叱りを受けることもあります。
でもね、無理やり椅子に座ることを強制させて、社会性が育つのですか?
だから、もう一度言っておきます。
「あなたの親切心は、実は大迷惑かもしれないぞ!」
結論!思い込みは子どもの可能性を潰します
思い込みほど怖いものはありません。
だって、本当にある問題点に気付くことができないのですから。
放置ですよ。
もうね、放置プレイですよ。
最後に、「発達に遅れがあるが、我が子にできだけのことをしてあげたい」と考えている保護者の方へ。
「やる気や努力でどうにかさせようとする学校の先生」とか、「親戚のおばちゃん」とか、「近所の気のいいおっちゃん」とかは、発達の専門家ではありません。
外野の意見は、適当に流しておけばいいです。
疑問があれば、専門の人にかかりましょう。